LGBTとは何ですか

Q1 最近,会社でもLGBTへの対応が必要だとか言われますが、そもそもこれは何なのでしょうか。法令に定められている言葉なのですか。

(答)LGBTという言葉そのものは法令では定められていませんが、関係は次の質問でお答えします。LGBTは「エル・ジー・ビー・ティ」と読み、性的な少数者の例を示した言葉です。LGBTのLはレズビアンということです。

自分は女性だけども同性である女性を性愛の対象として感じている人を意味します。複雑なのですが「自分は女性」とは正確には生物学的に女性である人だけでなく、自分のことを女性と認識している男性も含みます。従って、外見上(戸籍上)は男性が女性と交際していても、その男性が自分のことを女性と認識している場合、レズビアン(L)ということになります。

Gはゲイです。自分は男性だけども男性を性愛の対象として感じている人を意味します。ここでも「自分は男性」とは自分のことを男性と認識している女性も含みます。

Bはバイ・セクシャルで、自分が自分の性別についてどう感じているかは別として、男女ともに性愛の対象として感じるという意味です。

Tはトランスジェンダーで、「LGB」とは異なる観点からの言葉です。自分の生物学的性別と自分が認識している性別が違う、つまり、生物学的には男性なのに自分のことを女性と認識しているとか、逆に生物学的には女性なのに自分のことを男性と認識しているという意味です。

 LGBTについてSOGI(ソギとかソジと読みます)という言い方が用いられることも増えています。 LGBTのうち「LGB」は、性愛の対象である性別が男性か女性かという性愛の方向性、つまり「指向」の問題です。そうするとこれを総称して「性的指向」と言うこともできます。英語では「セクシャル(S)オリエンテーション(O)」=SOです。LGBTのうち「T」は、自分の性別についてどのように自覚=自認しているかという問題なので「性自認」と言うこともできます。英語では「ジェンダー(G)アイデンティティ(I)」=GIです。まとめてSOGIと表現します。

 このように、一言で「性的少数者」と言っても、一見して分からないほど多様なものです。この多様性をこれらの言葉を通じて理解することが大切だと思います。

Q2 LGBTまたはSOGIは法令でどう取り上げられているのですか。

(答)2019年に労働施策総合推進法が改正され、パワハラの防止が企業に義務付けられたのですが、この法律の適用の指針を厚生労働省が公表しています。その指針にパワハラの例として、性的指向・性自認(SOGI)をめぐる言動もパワハラになる場合があるとされました。既に大企業には適用されていますが、2022年4月からは中小企業にも適用されます。

(1)労働者に対する「精神的な攻撃」はパワハラとされました。その例として「人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。」があげられています。

(2)労働者に対する「個の侵害」つまり、私的なことに過度に立ち入ることもパワハラとされました。 その例として「労働者の性的指向・性自認(中略)等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。」があげられています。

 例えば、会社で男性の従業員が上司や同僚等に「自分は実は自分のことを女性であると思って苦しんでいる」と打ち明けたとします。聞いた方もびっくりすることがあるかもしれませんが、本人の同意なく、他の者に伝えてはいけません。当事者は本当に悩んでおられることが多く、勝手に広められたことから自殺したという事件も現実に発生しています。

Q3 私は同性に対して性的な魅力を感じるという感覚について、実例を知らないし、共感できません。法的には、私は共感しなければいけないということなのでしょうか。

(答)あなたの感覚はあなたの自由です。当然のことですが、共感することが法的に義務付けられることはありません。職場でLGBTの方への侮辱的な言動をやめようということで、労働施策総合推進法には罰則もありません(内容によっては別の法律で処罰されることはあります)。宗教の中には同性に対して性的な魅力を感じることは神の教えに反するという教義を持っているものもあるようですし、道徳に反するという考え方をお持ちの方もおられます。しかし、まず、LGBT・SOGI自体は違法だったり犯罪的な現象ではないことを認めて、その人達が誇りを持って働くことを邪魔しないようにしようというのが現時点の法律の考え方だと思います。

 さらに次第に共感できるようになると良いと私は個人的には思います。

 自分と違う生き方や感覚の人がいる場合、「あの人はみんなとは違う。それは不愉快だし、間違っているから改めさせよう」と考えることがあります。私も実際にそういう気持ちになることがあります。しかしこれは正しい態度なのでしょうか。山口県の詩人の金子みすゞの詩の「みんなちがって、みんないい」という言葉が行き渡ってきましたね。

 ほんの少し前までは職場で女性に対して「君、結婚しないの」「子供はまだ?」等の言葉が平気で投げかけられていたのではないでしょうか。先日、再放送でほんの10年前のドラマを見ましたが、職場のシーンでこんなセリフが飛び交っていました。今では、こんな言葉はテレビドラマでは使われていないと思います。10年ほどでセクハラはいけないという考え方が普及し、実際に働きやすくなっていませんか。LGBT・SOGIも同様で、人と違うと感じることがあっても働きやすい状態になれば、全ての人が働きやすく、住みやすい社会になるのではないでしょうか。このような考え方を「ダイバーシティ(多様性)」と言い、経済団体には労働生産性を高めるという観点からダイバーシティを大切にしようという意見もあるようです。

以上