領収書等法的な文書の保管について

Q1 領収書を保管していると大量にたまり邪魔になります。どのくらいの期間保管しておかないといけないのでしょうか

(答)領収書は、お金を支払ったことの証明書です。お金を請求する場合、請求する側が請求には根拠があることを証明する必要があり、支払ったことは支払った側が証明しないといけないことになっていますから、領収書は法的に請求を断ることができるようになるまでは保管しておくべきだということになります。消滅時効というのは、時効期間を過ぎれば支払いを断ることができるという制度です。

 2017年に民法が改正され、2020年4月1日に施行されました。民法改正前は、消滅時効の期間については、1年、2年、3年といった短いものがあったのですが、2020年4月1日以降に取引で発生した債権については消滅時効の期間は5年に統一されました。つまり、今では領収書は5年間保存するべきだと考えておけば良いでしょう。

(問)家賃や電気、ガス、水道等自動引落にしているものについても領収書は5年間保管しなければならないのでしょうか。

(答)自動引落については、銀行等の通帳があれば支払いは証明できますから、そもそも領収書が発行されないこともありますし、発行されても保管をしておく必要はないと思います。

(問)現金で支払うにもかかわらず、領収書を渡さないと言われたらどうしたら良いのでしょうか。

(答)今回の民法改正で、「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。」(民法486条)ことが明文化されました(昔からそう解釈されていましたが、法律に記載されました)。つまり、領収書と引き換えに支払うと言えばよいのです。現金で支払うのに対して領収書は出さないと言われたら、支払う前に法律相談に行っていただきたいと思います。

Q2 自宅を建てた際の建築確認済証や検査済証その他設計図はどの程度の期間保管するべきなのでしょうか。何かの役に立つのでしょうか。

(答)家を売却するか撤去するまでは必ず保管してください。増・改築する時の建築確認申請に必要なことがありますし、売却する時にこれがないと買主が増・改築に困ることがあるので家の価格にも影響することがあります。

(問)「登記済権利証」は厳重に保管していますが、これを持っている人がその不動産の所有者ということになるのですよね。

(答)登記済権利証はその書類の所持者を不動産の所有者と認める制度ではありませんのでそこまで厳重に考える必要はありません。不動産登記簿に所有者として登記されている人が不動産の所有者であると推定されます。今では「登記識別情報」という制度に変更されていますが、不動産登記簿上の所有権の登記名義人と登記済権利証や登記識別情報に記載された者が同一人物であることの確認手段にすぎません。これらがなくても登記名義人本人であることが確認できれば不動産の譲渡手続はできます。ただ、これらがないと本人確認の手続が余分に必要になりますので、登記済権利証や登記識別情報は不動産を売るか、建物なら撤去するまでは保管していただきたいと思います。

Q3 生命保険証券は契約終了まで当然保管しておかないといけませんよね。

(答)そのとおりです。しかし、単に保管するだけでは不十分です。保険金を請求する時には、契約したあなたは判断能力がなかったり、そもそもこの世に存在しない場合がありますので、保険金の受取人や保険金を活用して欲しい人にあなたが生命保険に加入している事実が伝わるようにしておく必要があります。せっかく死亡後すぐに受け取ることができる契約になっているのに、契約があることを誰も知らなかったため、受け取るまでに大変な時間がかかったことがあります。そもそも受け取られていない場合もあるのかもしれません。それでは困るので、生命保険協会は2021年7月から生命保険契約照会制度を発足させました。契約者本人やその相続人から定められた手続に従って生命保険協会に照会すれば、保険契約の有無、契約保険会社、内容を回答してくれることになりました。今後、いざという時には利用できると思います。

Q4 株式会社の株券制度は廃止されたようなことを聞きましたが、私はある会社の株主で、その会社の株券を持っています。株券を持っておく意味はなくなったのでしょうか。

(答)株券については、上場企業は2009年に株券を電子化し、廃止しました。しかし、上場企業以外の株券は当然には廃止されていません。定款を変更して株券を廃止できるようになっています。上場企業ではない会社で株券を廃止していない場合は、株券が株主権そのものですから、株券をなくしてしまうと面倒なので大切に保管してください。
 上場企業については、株券を電子化してもあなたが株主であることには変化がありませんが、株券を持っておられるなら、証券会社を通じて証券保管振替機構に提出していただかないと株式の譲渡ができませんので、管理上提出しておいていただいた方が良いと思います。

 上場企業以外で株券制度を廃止した会社については株券を譲渡する方式では株主権の譲渡ができなくなっていますが、こちらも株券を廃止してもあなたが株主であることに変更はありません。株券は、あなたが株主であったという証拠にはなりますから、譲渡するまでは廃棄せず保管しておかれた方が良いと思います。

Q5 インターネット上で契約すると,そもそも紙の書面が交付されないのが普通です。この場合は証拠の保存はどうしておけば良いのでしょうか。

(答)インターネット上での契約についてはそのページを紙に印刷するかPDF等のファイルとして保管しておくべきです。契約内容をメールで送ってくればそれは当然保管しておいてください。契約期間中は当然保管し、契約終了後も5年間は保管しておくべきだと思います。コンピューター内に保管した場合、あなたに何かあった時、そもそもそのコンピューターが開かないとかコンピューター内のどこにあるのか分からないという問題があります。結構深刻な問題ですので、ノートにIDやパスワードや保管場所を書いて、本当に信頼できる人にだけ教えておいていただく等なんらかの工夫が必要だと思います。

以上