ネット取引をするときに最初に注意したいこと

Q1 スマホやパソコンを使ってネットで買い物等の取引をする際、カードを使う場合にはアカウントやパスワードを入力します。取引をするためにもカードとは別にアカウントやパスワードを設定する場合もあります。毎回少し不安を感じつつ入力しています。素朴な疑問なのですが、アカウントやパス
ワードを入力することは法的にはどういう意味があるのでしょうか。

(答)私も実はアカウント・ID(以下、単にアカウント等とします)やパスワードの電子的な仕組みは良く分かりません。ネット取引のようなおよそ人と全く会わない電子的な取引をしていると、目に見えない空間から商品やサービスが出てくるような錯覚に陥ってしまいます。しかし、取引は必ず自分と企業等、法的に責任を取る者との間の契約です。取引しているのがあなたであるということを相手に示すために、住所や氏名を入力したり、アカウント等を設定して入力し、それが他人に勝手に使われないためにパスワード等を設定しています。法的には住所・氏名を入力しなくてもアカウント等を入力すれば、あなたはネット上で本名を名乗り、責任を取ると宣言したことになります。法的に大切なことをしているという自覚を持つべきだと思います。アカウント等はネット取引でのあなたの氏名・住所であり、パスワードはあなたの自宅の鍵のようなものだと思います。
 アカウント等やパスワードは覚えやすいものではありません。多くの人は取引したページはスマホ等に登録し、アカウント等も記憶させているのではないかと思います。
 しかし、それで良いのでしょうか。アカウント等やパスワードは設定した時に必ず、ネット上のどこのページで何を設定したかをノート等紙に書いて保管しておくべきだと私は思います。スマホやパソコンを開くためのパスワードを設定したら、それを忘れてしまいそもそも開かなくなったという冗談のような話も聞きます。私は高齢者の後見人を何件もしているのですが、通帳から毎月1,000円等の定額が引き落とされているのだけれど、御本人がどこと何の取引をして引き落とされているのか忘れてしまい、自動引落を止めることができなくて非常に困ることがあります。取引明細が郵送されてくれば確かめることもできるのですが、郵送を省略する手続をしておられることを忘れた場合、取引相手すら分かりません。私は明細は費用がかかっても郵送しておいてもらった方が良いと感じています。
 もう一つは断捨離です。使わなくなったカードやアカウント等を放置しておくと、パスワードを悪い人に把握され、勝手に使用されてしまうことがあります。アカウント等はネット上のあなたの本名ですから、使わなくなったカードは廃止し、アカウント等はこまめに削除しておくことが大切だと思います。

Q2 アカウント等とパスワードの入力をするということは、自分の名前を名乗って、責任を取ると宣言しているようなものだということですが、ネットのページの画面では取引相手の名前が分かりにくいことがあります。これはおかしくないですか。

(答)まず、取引相手の住所・氏名・連絡先が良く分からなかったら絶対に取引しないでください。ネットのホームページから商品を購入する場合、販売業者がどこの誰かは申し込むページの画面に明示されているはずです。ネットでの販売は特定商取引法に定める通信販売に該当しますが、特定商取引法で、画面に業者の住所・氏名・電話番号の表示をすることが義務付けられているからです。ところがページによってはなかなか業者が誰か分からない画面もあります。取引の責任を取るべき相手の住所・氏名という根本的な情報が良く分からないのに取引するということは極めて危険なことですし、そこにカードの情報を入力してしまえばさらにこれを悪用される危険があります。取引相手の名前が分からないとか、あるいは分かりにくい場合は絶対に取引するべきではないと思います。
 さらに、企業名が明確に記載してあっても、その企業の公式ホームページを見て、本物か確認することが大切です。
 相手の業者が外国人であることもあります。あなたが消費者であれば、あなたが日本で取引している以上、その取引には日本の特定商取引法や消費者契約法が適用されることになっていますが、実際には外国企業の責任を追及するのは非常に困難です。

Q3 ネットでチケットを購入したら正規の購入ではなく、個人間の売買の仲介でした。チケットを売りたいという人があれば私にそれを転売するというのです。売りたい人がいなければ入手できないし、チケットの現物が入手できて、本当に入場できるかどうか実際に行ってみないと分からず、チケットを
入手できなかったり、入手したチケットで入場できなかったりすれば、返金するということでした。こんな取引方法が許されて良いのでしょうか。

(答)コンサートやイベントのチケットを買おうと思ってイベントの名前を検索し、検索の上位に出るページに入ってチケットを購入したら、実際は正規のチケットではなく、誰かがチケットを売るのでそれを仲介するというチケット販売仲介業者のページだったということがあります。この取引に対しては消費者庁も注意を呼びかけています。多くのチケットは転売が禁止されていますから、仮にチケットを入手しても入場できないことがあります。転売業者はその場合は代金を返還すると言っていますが、遠隔地の会場に行ってから入場できないことが確認できてお金を返してもらっても損害はチケット代だけではありません。法的には電子消費者契約法で、このような錯覚による契約には効力がないこととされています。しかし、法的に効力がないといっても一度カード等で決済してしまえば、取り戻すことは極めて困難です。決済する前に一呼吸おいて同じイベント名の他のページをチェックする等すれば、正規の販売ページではないことが分かりますので一手間を惜しまないことが大切です。前問でも書きましたが、ネットの取引では疑いを持って、確認の手間を惜しまないことが大切です。

以上