それ、犯罪ですよ~あなたが詐欺をしないで!

Q1 アルバイト先で知り合った人から、私が銀行で通帳を作ってくれたら10万円で買ってあげると言われました。通帳だけでカードは作りませんので、私が損をすることはありませんよね。

(答)明確で重大な犯罪です。絶対にやめてください。あなたも大変な損害を受ける可能性があります!
 犯罪等でお金を得た場合、そのお金をどこに隠すかという問題があります。そこで犯罪者は他人名義の口座を利用しようとすることがあります。通帳の譲渡をすることは犯罪者に犯罪で得たお金を隠す場所を提供するということです。犯罪者としては喉から手が出るほど欲しいものです。振り込め詐欺で利用されているのもこのような他人から譲渡された口座です。そこで、国際的にも預金口座が犯罪に利用されないように防止するよう求められています。漫画のゴルゴ13は、報酬を「スイスの銀行の口座に振り込んでおいてくれ」と言っていますが、現代ではそんなことはできないと思います。軽い気持ちで通帳の譲渡を考える人がおられますが、それは本当に深い闇の犯罪の世界につながっています。

(1)犯罪に利用されるのを防止するため、金融機関は通帳を第三者に譲渡等して使わせることを厳しく禁止しています。あなたが、他人に通帳を譲渡等して使わせることが分かっていれば通帳は絶対に作れません。従ってその目的を隠して通帳を作るということは、あなたは金融機関から通帳をだまし取ったことになりますから、刑法246条1項の詐欺罪になります。10年以下(1か月以上)の懲役刑とされています。

(2)持っている通帳を譲るのも犯罪です。「犯罪による収益の移転防止に関する法律」28条2項で、あなたの通帳を利用しようとしている人に通帳を譲渡する行為は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金刑とされています。

 このように他人に譲渡等して使わせようとして預貯金の口座を開設したり、譲渡等して使用させることは犯罪を助長する行為なので、それ自体反社会的な行為とされています。あなたは「自分は反社会的な人間ではない」と思っていても、このようなことをするとあなたは警察や金融機関から暴力団員と同様の反社会的な人間であると認識されてしまうことがあります。そうなれば、その後、金融機関から預貯金口座の開設を断られ、通帳が作れなくなることがあります。そのくらい重大な違法行為なのです。損がないどころか日常生活にも差し支えることになりますよ。

Q2 携帯電話を売ることも犯罪なのでしょうか。

(答)通話できない状態にある携帯電話機の本体は単なる機械ですから、これを譲渡しても犯罪にはなりません。ただ、繰り返して売買する場合は、「中古品の販売業」をしていることになりますから、古物営業法に基づく許可が必要です。問題は契約して使用できる状態になっている電話機です。

(1)「スマホを契約してくれたら、10万円アルバイト料をあげる」などと言われることがあるそうです。学校の同級生やバイト先の人から勧誘されるそうで、スマホの料金等は全て他人が負担してくれ、契約したスマホを渡せば、5万円とか10万円のバイト料をくれるというのです。これも、携帯電話は振り込め詐欺等の犯罪に多用されるため、携帯電話会社は契約したスマホ、iPhone等の譲渡を禁止しています。つまり、携帯電話会社は譲渡等して他人に使用させることが分かっていれば絶対に契約しないので、あなたは、携帯電話会社を騙して、契約して通話できるようになった携帯電話を取っていますからこれも詐欺罪になります。こんな「アルバイト」はあり得ません。本当にこんなことはしないでください。

(2)あなたが契約している電話機については譲渡するためにも、譲り受けるためにも携帯電話会社の許可が必要で、親族又は生計を同じにしている者以外に承諾なく譲渡することは携帯電話不正利用防止法7条で禁止されています。これを、「業として」つまり、繰り返して行えば2年以下の懲役か300万円以下の罰金刑とされています。

Q3 私は、本年の3月までは大学生で仕事はしていませんでしたが、卒業後アルバイトをしていたら、アルバイト先の先輩から、「自分の言うとおりにやれば、国から『なんとか給付金』が100万円もらえるから、自分が教えてあげる。うまくもらえたら半分もらうよ」と言われて、私のスマホから先輩が言うとおり入力したら、簡単に100万円入金されたので50万円お礼に渡しました。これはどういうことなのでしょうか。

(答)これは「持続化給付金」で、あなたの行為は詐欺である可能性が極めて高いと思います。これを読んだら直ちに弁護士や消費生活センター等の公的機関に相談してください。その指導に従い、弁償するとともに警察に申告する必要があれば申告してください。

 コロナ禍のために事業者の中には売上が何割も減って、ものすごく苦しんでいる人がたくさんおられます。そこで、政府は救済のため緊急に「持続化給付金」という制度を作り、前の年度の売上に比較して一定割合以上売上が減少した場合、個人事業者には100万円、法人には200万円の給付金を出して事業が継続できるよう支援することとしました。本年の5月から申請を受け付けました。本来、嘘の申請は確認して防止するべきなのでしょうが、早期の救済のため申請を簡素化し、申請者を信頼して給付するようにしています。その政府の考えを逆手に取って、嘘の申請をして持続化給付金を騙し取る人が出てきてしまったようです。あなたは昨年は学生で、当然売上はなかったのですから、持続化給付金が受領できるはずがありません。政府も申請時には確認しない場合もありますが、いずれ事実を確認しますから、嘘の申請は発覚します。あなたの行為は詐欺である可能性が極めて高いので、至急相談して、発覚前に弁償を申し出るとともに警察にも申告するべきだと思います。

 あまりにあたりまえのことですが、嘘を言って利益を得たらそれは犯罪です。特に若い人が「アルバイト」などと言われて全く意識せず詐欺を行ってしまうことがあるようです。本稿を読まれた方は周りの人に注意してあげてください。

以上