著作権について-著作権の侵害をしないように ご注意を!

Q1 私は飲食店をしているのですが、お客さんが店の伝票の裏にペンでサラっと私の似顔絵を書いてくださいました。そのお客さんは当店のことを気に入ってくださって時々来られますが、何時来られるか分かりませんし、名前も住所も分かりません。
 ただ、この似顔絵はなんとも味があるので、当店の広告に使いたいのですが、いただいたものなので使っても問題ないですよね。

(答)使ってはいけません。似顔絵にはそのお客さんの著作権がありますから、必ず、そのお客さんが来られるのを待って使用についてきちんと協議をしてください。

Q:こんなものにと言っては悪いのですが、素人と思われる人が書いた絵でも著作権があるのですか。

A:著作権法2条1号に「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」とあります。素人であろうと画家であろうと、似顔絵はまさにその人の思想や感情を創作的に表現していますから著作物ですよ。

Q:当店の伝票に書いたのだから、そもそも当店の所有物ということにはならないのですか。

A:伝票はあなたのものですが、絵は書いた人の著作物です。

Q:伝票の裏に書いたくらいだから、どう使ってもいいよという意味ではないのでしょうか。

A:それは書いたご本人に確認しないと分からないですね。

Q2 書いた人と会えたら、似顔絵の著作権を譲渡してもらうことができるのでしょうか。 また、そうした場合、似顔絵に色を付けたり私の自由に加工して良いのでしょうか。

(答)著作権は譲渡できます。普通の物品の売買や贈与と同じです。自由に利用できるようになります。ただ、色を付けたりして改変するとなると話は別で「著作者人格権」の侵害になり、無断でしてはいけません。

Q:著作権とは別に著作者人格権があるということですか。

A:そのとおりです。著作権法17条には著作者は著作権及び著作者人格権を享有すると定められています。

Q:著作者人格権と著作権はどう違うのですか。

A:創作物と同一のものをそのまま利用する権利が著作権です。
 これに対して似顔絵にもともとなかった色を付けたら、書いた人からすると「自分が作ったものとは違うぞ」ということになるかもしれません。色くらいなら「どこが悪いの」と思われるかもしれませんが、いやらしい感じにされたら作者としては許せない気持ちになることもあるでしょう。まさに「著作者の人格を傷つけられた」という感覚も尊重するべきでしょう。
 このように著作物を改変することは著作者の人格を害することがあるので、著作者人格権を認め、著作者の同意なく変更・切除等の改変をすることを禁止しています(著作権法20条)。
 ただ、何をすれば改変に当たるかの判断は難しい場合がありますから、著作者とも協議し、弁理士や弁護士の意見を聞く必要もあると思います。

Q:著作者人格権が問題となったことはあるのですか?

A:裁判にはなりませんでしたが、「おふくろさん」という歌に歌手がセリフを入れて歌ったことについて、作詞家から、著作者人格権侵害との異議が出たことがありますね。
 また、着ぐるみのゆるキャラをめぐって、著作権の譲渡を受けた地方自治体が、多少デフォルメして小型化した人形を発売したことについて、これがゆるキャラの改変に当たるとして著作者人格権侵害の問題になったこともあります。

 著作物の改変や加工については、同一性を保った利用とは別の権利侵害になる可能性があることは知っておいてください。

Q:著作者人格権も譲渡してもらうことはできないのですか。

A:著作者人格権は譲渡できません(著作権法59条)。トラブル防止のため、著作者人格権については著作権とは別のいろいろな工夫も必要です。このことを意識して、専門家の意見を聞いて契約するようにしてください。

Q3 著作者に著作者人格権があるとすると、例えばデザイナーを何人も雇っているデザイン会社に私の似顔絵をデザインしてもらった場合、著作者は会社ではなく、書いたデザイナーということになるのでしょうか。

(答)このように会社が従業員に職務上作成させている著作物は、職務著作と言い、その会社の就業規則等で「従業員を著作者とする」等定めているような例外的な場合を除き、作成させた会社が著作者とされています(著作権法15条)。
 つまり、著作権も著作者人格権もいずれも作成した従業員ではなく、作成させたデザイン会社に帰属します。デザイン会社と契約すれば良いということです。

Q4 当社が似顔絵の著作権を取得した場合、誰かがその真似をしたらその使用をやめるよう請求できますよね。そうなら、著作権を確保しておけば、これを当店のシンボルマークとして使用しても大丈夫でしょうか。

(答)著作権侵害があれば、その使用の差し止めを求めることができます(著作権法112条)。
 しかし、差し止めるには、相手が似顔絵が存在していることを知って真似したことを証明しないといけません。また、著作権は登録しているわけではないので、あなたが著作権者であることも証明しないといけません。これはなかなか面倒です。
 シンボルマークとして使用したいなら、むしろ商標登録までする方が適当だと思います。これは登録してありますから、差し止めや損害賠償請求が簡単にできます。但し、費用もかかりますし、商品やサービスの区分を特定して商標登録をする必要もありますので、弁理士等の専門家に相談してみてください。