Q1 振り込め詐欺で高齢者が1,000万円の被害に遭ったというニュースがありました。子供や孫と勘違いするとのことですが、なぜ騙されるのでしょうか。
(答)振り込め詐欺(オレオレ詐欺)等、知らない人が連絡してきて、短期間でお金を払わされるタイプの詐欺があり、警察では、「特殊詐欺」と言っています。まず特殊詐欺の一例である架空請求詐欺の実例を紹介します。例えば次のようなハガキが来ます(国民生活センターのホームページより)。
私も何件も相談を受けました。このハガキは平成29年のものですが、今でもほぼ同一のものが送られています。相談の際はみなさん真っ青になって「支払うから、今後請求がないよう仲介して欲しい」とおっしゃいます。支払うことが前提の相談なのです。みなさん相談の時点で、「支払う気持ち」で一杯なのです。
このハガキの内容はヘンですから、一読すれば、おかしなハガキであることはすぐ分かると思うのです。
それなのに、私が「絶対に連絡せず、支払わないでください」と言っても、「執行官が来たらどうするんですか」と言う人が少なくありません。
そこで、まず極めて簡単なこんな指摘をします。
⑴まず、ハガキに書いてある「千代田区九段南1-●●(原文には書いてあります)」という住所です。住所をネットで検索するとその住所がそもそも実在しません。そのうえ、「これは詐欺である」という注意の記事が出てくることすらあります。
⑵次は電話番号で、番号をネット検索すると「詐欺である」という注意の記事が出てくることもあります。
⑶請求金額も、請求理由も書いてありません。
そこまで申し上げても、「執行官が来たらどうするんだ。すぐ払う!」と言い続ける人も相当数実在します。私は「万一執行官と称する者が来たら110番するとともに、私に連絡してください」と言います。それでも「夜中や土日に来たらどうするんだ」と、まだ頑張る人もおられます。
私達のところに話があれば、このように体を張って支払わないよう防止しています。執行官が来たことは当然一度もありません。相談に来てさえいただけば、警察も消費生活センターも弁護士等も専門家(それどころか銀行の窓口等気付いた人)は全員、全力で支払わないよう阻止しています。
このように、説明してもまだ「払おう」という気持ちが強い人が多数おられるのです。私はここまで「支払いたい」と思う人が多数おられることに驚いています。
ブレーキとアクセルの踏み間違い事故の話を聞きます。壁に衝突してもアクセルを踏み続けているという話を聞いたことがありますが、いきなり払う気持ちになる人は、例えばブレーキとアクセルを踏み間違えているのに気付いておられないのではないでしょうか。
Q2 自分もそんな心理状態になるのでしょうか。特殊詐欺はどのくらい発生しているのですか。
(答)警察によると平成30年中で、特殊詐欺全部の被害額は全国で363.9億円だそうです。件数としても約1万6,500件です。平成26年は565.5億円でした。少し減っていますが、すさまじい被害額及び被害件数です。
この件数を見るとどなたでもこんな被害に遭うような異様な心理状態になることがあり得ると思わざるを得ません。私だってそんな気持ちになるのかもしれません。振り込め詐欺や架空請求の他に、還付金をあげるからお金をとりあえず払えとか、「あなたが悪いことをしたから、お金を払わないと逮捕されるぞ」というようなものもあります。
Q3 特殊詐欺を見分けるにはどうすれば良いのでしょうか。
(答)私は、「相手が何と言ったら詐欺だ」という観点で見分けるより、逆に、ご自分が連絡を受けてすぐに、「直ちに支払おう。相談なんかしてたら大変なことになる」という気持ちになってしまったら、それは特殊詐欺ではないかと思っていただきたいと思います。そんな気持ちになったら、立ち止まって「これはおかしい」と思い、警察・消費生活センター・弁護士等に相談してください。
警察等に相談するわずかな時間のせいで、解決可能な金額が激増したり、解決不能になることは私は「絶対ない」と言って良いと思います。
あなたが、「すぐ払わなければ」と思い、そのことが自覚できたら、払わずに、絶対に警察等に相談してください。
この相談を読んでいるあなた!今、そんな気持ちになっていたら、払う前に警察等に相談に行ってみましょう!
ご本人ではなかなか異常な気持ちになっていると気づきにくいかもしれません。あなたの知り合いが、「相談に行くより前にすぐ払う」という気持ちになっておられたら、相談に行くよう勧めるだけでなく、可能ならその場から警察等に引っ張って相談に連れていってあげていただきたいと私は思います。
子供に「知らない人について行ってはいけない」と教えたら、子供はこの人は「知らない人ではない」と思って誘拐されることがあるそうです。Q1で、ハガキの住所が実在のものでないと言いましたが、実在の住所が書いてあることもあるでしょう。被害者は「自分のもらったハガキには実在する住所が書いてあるから特殊詐欺ではない」と思ってしまうようです。「こう言われたから特殊詐欺」という知識はむしろ危険です。
こんなことで闇社会に大切な老後の資金等が数百億円取られていると考えたら、心底腹が立ちませんか。突然連絡を受けたのに、すぐにお金を払わないといけないと思っているあなた!払う前に警察等に相談に行きましょう!
以上