金融商品の購入で最低限注意していただきたいこと

Q1 当社はある程度預金ができているのですが、金利が低いので資産の運用を考えています。ある人から「こんなチャンスは滅多にないですよ。当社はこの会社の幹事会社です。あなたにだけお教えします」として未公開株式の購入を勧誘されています。どういう点に注意したら良いでしょうか。

(答)非常に典型的な問題のある勧誘です。あなたは、この会社が上場すると思っておられるのですか?この人は、「幹事会社」とは言っていますが、「上場する」とは言っていませんよね。

 まず、最低限次の点は確認してください。

1 未公開株の販売ができるのは登録を受けた証券会社と未公開株の発行会社だけです。その人は財務局に登録されているのでしょうか。登録されているかどうかは金融庁のホームページで確認できますから、必ずホームページで確認してください。悪質な業者は有名な会社と混同するような名前を名乗っていたり、ひどいケースでは、有名な会社の名前を勝手に名乗っていることもあります。名乗っているのが登録会社なら、念のためあなたが自分でその会社の電話番号を調べて、電話して、間違いなく同一の会社の人と話しているのか確認してください。

2 その人が言っていることをきちんと「連絡文」等として書面にしてもらってください。最初に説明しましたとおり、この人は未公開株の発行会社が「上場する」とは言っていません。書面を要求すればそのことがはっきりします。

 「未公開株」と言うと、なんとなく、これから上場する株式のように思われるかもしれませんが、要するに証券市場では取引されていない株式ということです。市場で売買されていない物を買うということは、もし、これを売りたいと思ったら、誰か「買いたい」という人を自分で見つけるしかありません。本当に慎重に考えてください。金融庁のホームページに「未公開株の被害にあわないためのガイドブック」が掲載されていますから、必ず読んだうえで検討してください。

Q2 未公開株はともかくとして、投資信託等の資金運用を検討する場合、チェックポイントはありますか。

(答)最も初歩的なのは次の点だと思います。

1 資金運用として株式や投資信託、社債等は「金融商品」に該当します。そして、金融商品の販売をするには、財務局への登録が必要ですし、助言等にも届出が必要です。まず、登録や届出がされているか確認してください。

2 金融商品を購入する場合、証券会社等は目論見書等数十ページの冊子をくれます。法令で重要事項の説明義務が定まっていますので、業者は説明の文書を顧客に交付しないといけません。

 ここで、あなたが購入しようとしている金融商品について、次の質問に答えてみてください。

ア その商品はどうやったら現金に戻せるのですか?証券会社等から勧誘を受けているため、預金と同じような感覚で、何時でも現金化できると思いこんでいる人がおられます。「定期預金だって利息を放棄すれば解約できるじゃないか。あたりまえだろ」という感覚です。

 しかし、金融商品はそういうものではありません!

 現金を渡せば商品が手に入りますが、その商品は一般的には簡単にお金に戻すことができません。お金に戻すのには必ず一定の手続きが必要で、さらに費用がかかるのが普通です。しかも、一定の期間内は現金に戻せないうえに、その間に価格が0円に下落してしまうこともあり得るため、購入後価格が下がりだせば、価格が上がることを神に祈るしかないという構造の金融商品もあります。現金に戻す方法や戻せない間のリスクを知らないまま、取引してはいけません。こういうリスクを業者は必ず説明しています。きちんと聞いてください!

イ 出したお金が増えたか減ったかは何をどう見たら分かるのですか?日経新聞で分かるのですか。勧誘した人から聞かないと分からないというなら、相手に対する絶対の信頼がないと取引はできません。

 約1,000万円で投資信託を購入した人がおられました。「価格が下がっている」と言われたが納得できないとのことでした。納得できないということなので、その人に「下がっているのは何を見たら分かるのですか」と質問しましたら、「日経新聞で分かる」と業者から言われたということでしたが、自分ではこれまで確認したことがないそうです。日経新聞には確かに、その商品の名前が出ていましたが、その日は「1口1万8,000円」と出ているのです。相談者は約1,000万円で買ったそうです。掲載されている価格は1口1万8,000円です。これでは下がったか上がったか全然分かりません。この人は1口2万円で500口買っておられたのです。なるほど下がっていますね。しかし、1,000万円というのが実は1口2万円で500口だと知っていなければ、毎日、日経新聞を読んでも上がったか下がったか全然分かりません。

 3 以上の質問にすら答えることができないなら、そもそもその金融商品の取引を考えるべきではないと私は思います。

 これらが理解できたら、1日でどれくらい損をする可能性があるのか、取引で元金全部をなくすことがあるのか、元金をなくしたうえ、さらに損害が発生することがあるのか、価格の変動にはどんな現象が影響するのか等まさにその商品の構造を良く理解して取引するかどうか判断されたら良いと思います。

Q3 そう聞くと「預金」が一番かなと思いますがいかがですか。

(答)私は個人としては金融商品の取引に反対ではありません。現在の金利情勢で、預金だけでは、会社の資産を活用しているとは言えないでしょう。しかし、前問のようなことすら全然考えない人が、業者任せで取引に関与するということは、自動車を目隠しして、アクセルとブレーキの区別も知らず、運転して公道に出るようなもので、大惨事を起こすのは当然です。是非、きちんと商品の構造を理解して取引していただきたいと思います。