Q1 当社は資本金1,000万円、発行済株式総数2,000株なのですが、数名の株主には株主総会の招集通知が着きません。所在が不明です。株主としては少数なので総会には影響がないのですが、毎年通知するのが面倒です。何か良い対策はないでしょうか。
Q1当社は資本金1,000万円、発行済株式総数2,000株なのですが、数名の株主には株主総会の招集通知が着きません。所在が不明です。株主としては少数なので総会には影響がないのですが、毎年通知するのが面倒です。何か良い対策はないでしょうか。
(答)株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載した住所にあてて発すれば良いことになっています(会社法126条1項)。そしてこの株主名簿に記載されている住所に5年以上継続して通知等が着かない時は、その後は通知等を送る必要がなくなります(会社法196条1項)。通知が着いていないことは証拠としてきちんと保管しておいてください。なお、株主が通知等を送ってほしい住所を会社に連絡している時はそこに送らないといけません。株主名簿を作っていなければこの規定は適用されませんから注意してください。通知が着かないのは会社の責任ではありませんから株主の住所を調査する必要はありません。
さらに、このように5年以上通知等が着かない株主について5年間継続して剰余金の配当もしている(連絡が着かないので配当金は会社で保管するしかありません)場合は、その株式を競売してその代金を株主に交付することができます。競売ではなく、裁判所の許可を得て株式を裁判所の決める適正な価格で売却することができますし、要件を満たせば自社で買い取ることもできます(会社法197条)。この場合、株主には連絡が着きませんから、株式の代金は法務局に供託することになります。
このように所在不明となった株主の株主権をその株主の同意なく処理する方法があります。逆に言うと、株主は、住所が変更したときや相続したときは会社に届け出て株主名簿の書き換えをしてもらっておかないと、知らないうちに株主ではなくなってしまうことがあるということです。ご注意ください。
Q2 前問で気になったのですが、連絡が着かないために受領してもらえない配当金は何年間保管しておかないといけないのでしょうか。
(答)配当金の請求権は時効で消滅します。時効に関する民法の規定では以前は消滅時効期間は10年でしたが、改正され2020年4月1日に施行され、5年に短縮されました。2020年4月1日より前に発生した配当金は10年、それ以後に発生した配当金は5年保管してください。
Q3 当社は創業70年になりますが、相続等で株主の数が増えてしまい、株主が100名近くいるうえ、数株しか保有していない株主も多く株主名簿の管理に困っています。株主を減少させて整理する方法はないのでしょうか。
(答)まず、個別に交渉して株式の譲渡をしてもらう方法を考えるべきでしょう。さらにいささか強硬な方法ですが、会社法に「株式併合」という手続があります(会社法180条)。例えば1,000株発行している会社で、数株しか持っていない株主が数十名いるというような株主構成になっている場合、3分の2以上の議決権を保有する株主の賛成が得られるならば、株式をまとめてしまい、例えばそれまでの10株を1株にして、10株未満の株主には適正な代金を支払うことで株主でなくするという手続があります。手続が複雑ですし、相応の費用もかかりますが、株主数が多く、少数の株式しか保有していない株主が多い場合、経費節減の観点からも考える選択肢の一つだと思います。この手続は弁護士等専門家に相談してみてください。
以上