あなたの会社は株主名簿を作成していますか

Q1 当社は株式会社ですが、父親が創業する際に友人から出資してもらったそうで、その人と父親と私の3名が株主です。当社は法人税の申告の際に同族会社等の判定明細書を提出しています。
コレが株主名簿ですよね。

(答)結論として「コレ」(同族会社等の判定明細書)は株主名簿ではありません。株式会社は、株主名簿を作成し、これに株主の氏名又は名称及び住所、株主の有する株式の数、株主が株式を取得した日、株券発行会社である場合には、株式に係る株券の番号という株主名簿記載事項を記載しなければならないと定められています(会社法 121 条)。同族会社等の判定明細書は、その会社の法人税について同族会社か否か税務署が判定するために作成して提出するもので、株主名簿の記載事項が全部記載されているわけではありません。従って株主名簿とは認められていません。株主名簿を作成しないと100 万円以下の過料に処することとされています(会社法 976 条 7 号)。株式会社の最終的な支配者は株主ですから、誰が株主であるかを記載した株主名簿は株式会社の根本を形作る極めて重要な書類です。

Q2 株主名簿は本当に役に立つのですか。

(答)小さな会社であれば、確かに必要性を感じないこともあるでしょう。しかし、あなたが他社の株式を取得する場合は、その会社の株主名簿に譲り受けたことを記載させることが絶対に必要です。逆にあなたの会社の株式を売却する場合はあなたの会社の株主名簿が当然必要です。
 株券があれば良いと思うかもしれませんが、最近は多くの株式会社が株券不発行会社です。株券発行会社でも不発行会社でも、株式を取得した場合、株主名簿にその株式を取得したことを記載してもらわないと、会社に対して自分が株主になったことを対抗できません(会社法130 条)。株券発行会社の場合、株券をもらえば、第三者に二重に売却されることはなくなりますが、会社との関係では株主名簿に記載してもらわないと株主として扱われません。さらに株券不発行会社であれば、買ったことを株主名簿に記載してもらわないと、会社に株主として取扱ってもらえないだけでなく、第三者に二重に売却されればあなたはその株式を取得できなくなります。このように株式の売買をする時は、株主名簿に記載してもらう必要があります。記載してもらえば株主名簿の記載事項証明書の請求もできます(会社法122 条)。つまり、会社に株主名簿がなければ、その会社の株式の売買をすることができないのです。

Q3 株主名簿は法務局に保管してあるのですか。どこに保管してあるのですか。誰が見ることができるのですか。

(答)株主名簿は、会社がその本店に備え置かなければなりません。株主名簿管理人を定めて株主名簿管理人に保有してもらうこともできます(会社法 123 条、125 条)。株主や債権者から請求があれば、原則として閲覧させなければいけません。文書ではなく電磁的方法で作成することも認められます。株主名簿を法務局に保管する制度はありません。平成 28 年 10 月1日以降は、取締役の選任等、登記すべき事項について株主総会の決議を要するとき等は、議決権数上位 10 名までの株主か議決権数の3分の2に達するまでの株主のいずれか少ない方の株主の氏名や保有株式数を代表者が証明した書類を登記申請書に添付しなければならないことになりました。これは不正な登記が行われないよう法務局がチェックできるようにしただけで、この書面にも株主名簿としての効力はありません。

以上