「会社法」を考える -有限会社について

これから数回、「会社法」の基本的なしくみの話をさせていただこうと思います。

Q1 当社は父親の代からの有限会社ですが、これは何の法令に基づくものなのですか。

(答)「会社法」に基づいています。以前は「有限会社法」という法律があったのですが、平成18 年5月に廃止されました。それに伴い、平成 18 年5月以後、有限会社の設立はできなくなりました。
平成 18 年5月より前は、商法の「会社編」の中に「株式会社」という章がありました。平成 18 年5月に商法から「会社編」を独立させて、「会社法」が施行され、「会社法」の中に「株式会社編」が置かれました。従来、有限会社は株式会社の簡易なものとされていて、「有限会社法」には株式会社と共通する規定が多く、株式会社の規定を準用していました。有限会社独自の規定がそれほどあるわけではなかったのです。それで、平成 18 年の改正の際、「有限会社法」を廃止して「会社法」の「株式会社編」の規定を適用することとし(「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下「整備法」とします))、有限会社独自の扱いを「整備法」にまとめました。
有限会社の根拠法は「会社法」の「株式会社編」なのですが、従来の株式会社よりも簡略にできていたしくみは、有限会社と名乗り続けることで利用し続けることができることとしました(整備法3条以下)。

Q2 当社は有限会社のままで良いのでしょうか。株式会社に変更できるのでしょうか。有限会社のままでいることのメリットとデメリットを教えてください。

(答)有限会社という名称を株式会社に変える義務はないので、今のしくみを利用したいならこのままにされていても結構です。また、実体は株式会社なのですから何時でも定款を変更して株式会社に変更できます。ただし、一度変更したら有限会社には戻れませんので注意してください。有限会社であれば取締役の任期を定める必要がありません(整備法 18 条で会社法 332 条の適用を除外)。株式会社では取締役の任期は原則2年で、最長 10 年とすることができますがこれ以上長くすることはできません。また、有限会社は決算公告の必要もありません(整備法 28 条で会社法 440 条の適用を除外)。取締役を一度選任してそのままにしていたり、決算公告をしていない株式会社を時々見かけますが、過料に処されることがありますから、取締役を選ぶ予定がなかったり、決算公告をしたくないなら有限会社のままにするメリットがあると思います。しかし、有限会社の側が存続する形で他社を合併することはできません(整備法 37 条)。有限会社のままでは会社組織の拡大は難しいということで、これはデメリットでしょう。

Q3 有限会社の有限責任とはどういうことですか。私は会社の負債について保証していますが、有限責任でも保証債務はありますね。

答)有限責任というのは、法人の出資者が出資したからと言って出資額以上の責任を負わないということです。倒産しても出資金を失うことだけに責任を限定するということです。株式会社も有限責任です。保証は出資とは別の行為で生じる責任ですから、保証債務は有限責任とは全く別の話です。これに対し出資者が会社の負債について全部責任を負うことを無限責任と言います。「会社法」では株式会社以外に、出資者が全員無限責任を負う合名会社、無限責任を負う者と有限責任の者がいる合資会社、有限責任の者だけの合同会社の設立が認められています。合名、合資、合同の3つの形態の会社を持分会社と言います。解説書でも「会社法」の解説書には株式、合名、合資、合同の全部の会社の解説がありますが、「株式会社法」の解説書には株式会社と有限会社の解説しかありませんからご注意ください。
次回は資本についてお話しようと思います。

以上