キャッシュレス決済を考える

Q1 私が若い頃(数十年前)は「カードを使うと使いすぎてしまうから、現金で支払え」と言われていましたが、今ではコンビニ等でもキャッシュレスが非常に増えていますし、社会でもキャッシュレス化が推進されているように思います。キャッシュレスは法的にはどんなしくみになっているのでしょうか。

(答)キャッシュレス決済には、「前払い式支払手段」(プリペイド)、「後払い式決済手段」(クレジット)、「即時払い式決済手段」(デビット)の3種類があります。使用する道具はカードだけではなくスマホもありますし、私が知らないような道具もありますので、カードに限らないという意味で法律では「手段」という言葉が使用されています。以下、ここではいろいろな「手段」のことを「カード等」と表記します。

 「前払い式支払手段」(プリペイド)というのは、予め現金を払って(チャージ)、それを記録して、支払いはその金額の範囲でカード等で決済するものです。私もコンビニや交通系で利用しています。プリペイドは資金決済法で規制されています。

 「後払い式決済手段」(クレジット)は、利用代金をクレジット会社等が立て替えるものです。もっぱら割賦販売法の適用があります。「即時払い式決済手段」(デビット)は、利用する際、利用代金を銀行口座の残高から即時に支払うというもので、銀行法や資金決済法の適用があります。このように機能毎に適用される法令が違いますが、1つのカード等でいくつかの決済方法が採用されているものもあります。例えば前払い式だけれどもチャージした金額を超えれば、一定金額まではクレジットで立替払いしてくれるものもあります。

Q2 カード等を利用する上で注意するべきことは何でしょうか。

(答)まず、ご自分が前問のどの機能が付いたカード等を利用しているのか確認してください。前払い式の機能しかないカード等であれば、紛失しても、チャージしている金額以上に損害はないので、現金を落とすのと同じですが、クレジット機能が付いていれば、誰かに拾われると限度額まで使われてしまうことがあります。デビット機能が付いていれば預金残高全額まで被害に遭うことがあります。先に述べましたように、プリペイドやデビットにクレジット機能の付いているカード等がありますので注意が必要です。

 前問のどの機能も付いていない、単にポイントを付与してもらうだけのカード等もありますが、ポイントが付くだけだと思っていたらクレジット機能付きであることもあります。クレジット機能を付ける手続が簡単になっているので意識しないうちにクレジット機能を付けてしまっていることもありますから注意してください。

 さらに、特にクレジット機能の付いているものやデビット機能のあるカード等は1つか2つに限定しておかないと、紛失したことに気づかないまま使用されて大きな被害に遭うこともあります。紛失を考えるとカード等はどの機能でも少数に絞っておいた方が良いと思うのですが気づくと増えていますね。

 さらに紛失したときの緊急連絡先を確実に記録しておいてください。これはどこかにきちんと控えておかないと、いざという時に連絡できません!「カードに書いてあるから大丈夫だ」とか「スマートフォンを見ればわかるよ」というのは、全然意味がありません。紛失した時は、書いてあるカード等そのものがありませんからね。

 絶対にメモ帳等のカード等とは別のものに緊急連絡先を書いておいてください。

Q3 カードの利用明細について、郵送すると月数十円かかることにするとの連絡を受けました。郵送をやめ、ホームページで確認することにしておくと無料だそうです。利用明細についてペーパーレス化した方がゴミも出ないし、良いように思いますし、これも社会で推進されていると思いますが、何か注意することがありますか。

(答)全く個人的な感想ですが、費用がかかっても利用明細は郵送してもらった方が良いような気がします。
 利用明細が郵送されなくなってしまうと、利用明細の確認をせずに放置してしまうことがあります。そうすると不当に使用されたことに気づくのが遅れます。また、後見人等をしていると、認知症の人の中にはご自分がどのようなカード等を作成したか記憶しておられない人もおられ、そうなると利用明細が郵送されて来ない場合、預金口座から引き落としがあっても何のことか分からないことがあります。極端な場合は、銀行口座を閉鎖して支払いを止め、請求が来るのを待ったことすらあります。そう考えると、カード等の事業者にはご迷惑かもしれませんが、郵送してもらえるなら、それは多少費用がかかっても有用だと思います。

 また、ネットで取引した場合は、ネット上に出てきた約款や契約内容を印刷するか、画面をスクリーンショットで撮影する等して保管するようにしていただきたいと思います。ペーパーレス化は便利で、書面がなくなってきていますが、私は古い人間なので今のところ書面は大切だと思っています。

Q4 当社は年商数千万円の日用雑貨の販売店をしているのですが、販売促進や資金繰りのため、1万円で1万100円分当社で買い物ができるプリペイドカードを発行できないかと考えています。発行は可能でしょうか。

(答)資金決済法で、御社からお客様が物品やサービスの提供を受ける際に、その対価の支払いのための前払い式手段(カード等)を発行する場合、3月末または6月末において未使用残高が1千万円を超える場合は、財務局等への届け出が必要とされています。このようなことをする事業者を「自家型前払式手段発行者」と言います。この場合、未使用残高の半分を法務局に供託する必要があります。逆に言うと小規模なものはプリペイド式のカード等を届け出もなく自社で発行できるということです。ただ、法令に触れると大変なので、財務局に確認するなど、慎重に検討してから発行してください。

以上