Q1 コロナ対策として,政府の命令に従わない者がいた場合の対応をどうするかという議論があり、罰金だ、過料だなどといろいろ意見が出ていました。
その中で過料ならいいじゃないかということで法律ができたそうですが、過料とはそもそも何ですか?過料と罰金はどう違うのですか。
(答)テレビ等では報道されませんでしたが、同じ「カリョウ」という読みで「科料」という制度があります。
同じ「カリョウ」でも「科料」は刑罰です。この処分を受けると前科になります。過料は刑罰ではありませんから処分を受けても前科にはなりません。
報道によると最初、国会では、休業等の命令に従わない者には刑罰を科そうという意見が強かったのですが、コロナは自然現象ですので苦しんでいる人を前科者にするのはやりすぎではないかという意見があり、刑罰を科するのはやめ、過料にとどめようという結論になったということです。
Q2 過料はどういう手続で支払いを命じられるのですか。罰金や科料の手続とはどう違うのですか。
(答)罰金や科料は犯罪に対する処罰ですから、警察が捜査し、検察官が起訴して裁判所が判決で支払いを命じます。法律で、犯罪類型毎に、科料や罰金、懲役等のどんな刑罰を科するか決まっています(これが「罪刑法定主義」ですよね)。事件を起こした人が犯罪をしたことを認めている場合、略式命令と言ってごく簡単な手続で罰金や科料の金額が決まる手続があります。しかし、犯罪ですから、罰金や科料の対象となる行為をすると、証拠隠滅の恐れがある等の場合には逮捕されることもあります。
罰則を付けてしまうとコロナ陽性の人が入所施設から勝手に出ようとしたら逮捕されるとか、夜8時以降の営業停止を命じられた飲食店が無視して営業したら経営者が逮捕されるというようなことも考えられ、反対意見が多かったので、法令に刑罰を付けることをやめたということです。テレビで「コロナ陽性の人を逮捕したらどこに入れとくんでしょう」などというコメントがあり、私もナルホドと思いました。
これに対して「過料」は、警察ではなく、所管する役所が違反行為を発見したら、裁判所に違反した人に対して過料の裁判をするように申請し、裁判所が過料の支払いを命じ、その命令に基づいて違反者が任意に支払わない場合は、預金等財産を差し押さえて強制執行して取り立てることになります。過料の手続の一般法は非訟事件手続法なのですが、その121条で、過料の執行は検察官が行うことになっています。ただ、過料の中には、特別な法律で税金と同様に滞納処分で取り立てることができるとされているものもあります。
それでなくても忙しい担当の役所がこのような過料の裁判や取り立ての手続をするのはなかなか大変でしょうね。つまり、実効性があるのかということは一つの問題です。
Q3 過料はどのような場合に定められているのですか。
(答)実は過料というのは、非常にいろいろなところで定められています。例えば会社法976条には会社法違反について過料に処すべき場合が大量に定められています。株式会社は官報又は定款で定めた新聞に決算の公告をしないといけませんが、きちんと公告しておられますか?公告を怠ると100万円!以下の過料に処せられることになっています。昔はこれで過料に処したという話は聞かなかったのですが、最近時々耳にしますので、当然のことですが、法律で定められている行為は忘れずに実行してください。
Q4 過料を命じられても払わないとどうなるのですか?罰金や科料を支払わない場合とどのように違うのですか?
(答)過料を払わないと、通常の民事判決のような執行手続や場合によっては税金と同様の滞納処分を受けます。
科料は1,000円以上1万円未満です。罰金は1万円以上です。犯罪によっては億単位の罰金が課せられることもあります。
科料や罰金は支払わないと、まず財産の差押を受けます。それでも全額支払えない場合は、労役場に留置されます。まさに刑罰だということが良く分かります。過料については労役場留置はありません。
科料にかわる労役場留置の期間は1日以上30日以内で、罰金にかわる労役場留置の期間は1日以上2年以内とされています。罰金等の判決の言い渡しの時、例えば「被告人を罰金10万円に処する。罰金を完納することができないときは金2,000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する」というような判決が出されます。労役場留置は最長2年ですから、例えば罰金2億円の人が2年の労役場留置とされた場合、その労役場留置は2億円÷2年÷365日の計算で、「金27万円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する」という判決が出ることもあります。刑務所には「俺はここにいるだけで毎日20万円になるんだ」とか自慢する人もおられるそうです。
Q5 交通違反で払う反則金とは過料とも罰金とも違うのですか?
(答)軽微な交通違反でも、違反行為は最終的にはきちんと処分がなされないと「逃げ得」になりかねません。しかし、膨大な違反の全部について違反者を前科者にしていたのでは、社会が成り立ちませんし、そのための手続をする手間が大変です。そこで、違反が軽微であり、違反者が違反事実を認めている場合に限り、反則金にすることを通告し、期限内に反則金が支払われれば、罰金等の刑事処分にはしないというのが反則金制度です。つまり、反則金は、通告に従って支払えば刑罰を受けずに済む制度です。
以上