常識と違う不動産登記の話

Q1 最近、銀行の貸金庫に預けている物を行員が盗んだという事件がありましたね。私は自宅の不動産の登記済権利証を貸金庫に入れているのですが、もっと厳重に保管しないといけませんか。

(答)そこまで厳重に保管する必要はありません。登記済権利証(現在では「登記識別情報」と言う名称になっているので登記済権利証等とします)は不動産の権利そのものではありません。誰かが登記済権利証等を盗ってもその人はその不動産を取得できません。登記済権利証等は、不動産の登記名義人とあなたが同一人物であることの確認のために使われる書類のうちの一つで、あなたが登記名義人であることを確認する手段です。ただ、登記済権利証等を失くすと譲渡する時に登記に余分な手間がかかるため失くさないようにしてください。

Q2 私の自宅は◯市◯町1丁目2番3号ですが、自宅の登記簿では◯市◯町2953番で、表記が違っていることに先日気づきました。これは普通のことですか。なぜこんなことがあるのですか。これは自宅の場所の登記であることはどうやったら確認できるのでしょうか。

(答)同じ土地について登記の表示と住居表示が違うのはごく普通のことです。固定資産税の納税通知を良く見れば、自宅なのに所在の表示が違うことに気づかれると思います。土地の表示は明治維新後、地券が発行された当時の地名や地番が付されたのだと思います。しかし、その後、土地は開発され、住居表示はどんどん変更されました。古い地名がなくなることもありますが、登記の表示にとても古い地名が残っていることすらあります。ある程度統一されましたが簡単ではないようです。法務局には登記されている土地の地図が保管されていることが多いので、その地図を手がかりに場所を確認できます。ただ、この地図にも目印になるようなものは一切書いてないので、「分かったような分からないような」感じです。地図には基準点から測量して作成した地籍図が増えているため、土地家屋調査士に依頼すれば登記簿に記載された土地の正確な位置を把握できるケースが増えています。

Q3 相続登記が義務化されたとのことですが、不動産の登記は法務局が管理しているのですから、変更があったら当然登記されるものではないのですか?

(答)不動産登記制度は、基本的には私的な取引のために作られたので、登記をするかしないかは不動産の権利者に任されていて、前問の所在場所の表示は別として法務局が登記を職権で行うことは原則としてありません。その結果、特に相続登記については、放置してしまう人が相当数発生してしまい、不動産の所有者が誰なのか登記簿から調べるのが困難な土地が出てきました。登記簿から所有者の分からない土地の面積は膨大だと言われています。そこで、令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。相続開始から3年間の猶予期間が定められていますが、相続が令和6年4月1日より前に開始している場合は,令和6年4月1日から3年以内に相続した人が自分で相続登記をしなければなりません。登記しない場合、罰金はありませんが過料を払わされることがありますし、所有者が分からない不動産について裁判所の関与のもとで売却できる制度もできていますので、登記しないでいると権利を失う危険もあります。権利を守るためや空地・空家の発生で社会に迷惑をかけないためにも、相続や住所変更等があればきちんと登記をすることを忘れないでください。

以上