Q1 私は株式会社を経営していますが、決算書の作成は税理士さんにお任せしており税務申告の手段というようなイメージで、決算書の活用方法が良く分かりません。どんな点に注意して読めば良いのでしょうか。
(答)会社法第 435 条2項に「株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。」と定められています。この計算書類が決算書です。
決算書というのは、あなたの会社の活動を会計年度という一定の期間で区切って作成されるものです。私は会計の専門家ではありませんが、会社の経営状態を考える上では必須のもので、あなたの会社の経営状態をいわば写真に撮影したようなものだと感じています。資金は足りているのか、利益は出ているのか、改善すべきところはないのか、改善を図る上で期間的な余裕はどの程度あるのかといったことを考える上で、まず一歩目に確認するべき基本資料です。1会計年度毎に作るのは義務ですが、できれば毎月作成し、チェックするべきものだと思います。
Q2 私の会社では決算書では利益が出ているのに資金繰りは楽ではありません。どのあたりに問題があるのでしょうか。
(答)まず、御社の今期の損益計算書を見てください。3段階の損益が表示されています。
第1段階が営業利益(損失)です。売上から原価を引き、販売費や一般管理費といった経営に必要な経費を差し引いたものです。万一ここで損失が出てしまえば経営的には危機だと思います。
第2段階が経常利益(損失)です。営業利益に通常の事業年度でも発生する利息等営業外の収益を加え、逆に営業外で支払った利息等を差し引きます。経常利益がプラスなら会社は基本的に儲かっているということです。
第3段階が当期利益(損失)です。経常損益にその時期に特別に発生した損益を加減します。例えば固定資産を売却した場合、これはその期だけのことですから、まさに当期の損益です。
当期損益が利益であるということは、貸借対照表では資産が増えているか負債が減っているかしているはずです。「資産が増えているか借金が減っている」というところがポイントで、利益で借金が減ったり、資産を購入すれば純資産は増えますが現預金が増加するとは限らず、資金繰りの改善が実感できないこともあります。この場合、経営状態は良いのですから、借金の返済方法を考える等いろいろ資金繰りの改善策はあります。また、こういうことを言われる場合、意外な盲点が「現預金の残高がきちんと確認されていない。」ということで、社内で現金が消えている場合もあります。きちんと検討すれば不祥事を早期に発見することにつながることもあります。
Q3 我が社は決算書では損失なのですが、経営は大丈夫なのでしょうか。
(答)「減価償却」という科目があります。設備投資等をした場合、1期で全部支出したことにせず、一定の使用可能期間にわたって分割して費用を計上するしくみです。損益計算書に計上し、貸借対照表では資産がそれだけ減ります。減価償却費は、その期に支出しているわけではありませんから、これが原因である損失があっても手元に資金は残る場合があります。損失でも経営は困らないこともあるのですが、ここの見極めは重要です。税理士にもよく相談してみてください。
決算書は取引相手にとっても重要なものなので、会社法 440 条1項で貸借対照表については株式会社は定時総会終了後遅滞なく要旨の公告をする義務(ネット公告等でも可、大会社は損益計算書も必要です)があります。これに違反すると過料に処せられることもありますから注意してください。
以上